アニエスベーと5人の表現者たち
agnès b. with Lily Franky
映画、音楽、アート…アニエスベーが大切にしてきたスピリットに共鳴する、独自のスタイルを持つ5人の表現者。
最新コレクションを纏い、それぞれの表現活動やオリジナリティについて語る連載をThe Fashion Postで公開中。
第4回に登場するのは、俳優、文筆家、イラストレーターなど、多才な表現力で唯一無二の存在を確立する、リリー・フランキー。さまざまなフィールドを縦横無尽に行き交う表現活動において、いいものを作るためには何を大切にすべきなのか。オリジナリティとはどういうものなのか。30年以上にわたり第一線で活躍し続けるリリー・フランキーさんに、これまでの経験を経て感じた独自性について話を伺いました。
−リリーさんは、イラストレーター、コラムニストとして活動を始められて、最近では俳優として名だたる作品に出演されていますが、今のような未来は想像していましたか?
想像するも何も、画家を目指したこともないし、俳優を目指したことはないし、何かを目指していたわけじゃないんです。でも、表現したいという気持ちはたぶん子どもの頃からありました。だから、万年筆を持っているときは書いて、カメラを持っているときは写真を撮ってというふうに、それぞれ道具が違うだけという感覚です。人と一緒にするものとほぼ一人でやるものという違いはあっても、表現することに関しては、どの仕事でも同じだと思っています。それに、今もあるけど、昔は特に「リリーさんって、役者なんですか?」と聞かれることは多かったですよね。自分は役者一本でやっているんだという方からすれば、 偽物だということをたぶん暗におっしゃりたいんでしょうけど、俺、今まで絵でも文章でも写真でも、そう言われて来ているので。日本には、職人のように一つのことを極めている人は尊く、いろんなものをやっていると邪道という考えがあるんでしょうね。すごい数の映画やドラマに出ているみたいに言われますけど、撮影しているのは1年のうちのほんの一部分ですから。それが表に出ちゃってるだけで。俺が毎日おでんの絵を描いていても、誰も気がつかないですから。
−2013年、アニエスベーのエイズ予防啓発運動の一環で、参加アーティストの一人として、コンドームのパッケージデザインもされていましたね。アニエスベーというブランドにはどんな印象がありますか?
1982年に大学に入るために上京しているので、ちょうど日本に入ってきたアニエスベーに触れた第1世代だと思うんです。美術大学だったので、イケてるお姉さんたちはみんなアニエスのボーダーに定番のカーディガンを着て、ベレー帽をかぶってて。世界の男性アーティストのスタンダードだったスタイルを女の子が着てる!というそのボーイッシュさに、俺はすごくグッときたんですよね。世代的に、東京やパリをダイレクトに感じたブランドでしたね。コンドームの企画も、性に関する行動を意識的に後押ししていること自体がファッションだなと。思想とまでは言わないけど、そこに作り手の思い、変えたいものがある。みうらじゅんさんや俺は仕事柄、コンドームメイカーとコラボレーションすることは多いけれど、アニエスがやるから、さらに面白いと思って参加しました。
−さまざまなジャンルを自由に往来しながらもオリジナルの存在であるリリーさんは、オリジナリティという言葉をどんなものと捉えていますか?
若いときはオリジナリティのある何かを目指したいし、 唯一無二みたいに言われたいものだけれど、やっててわかりましたよね、目指すものじゃないなって。それって自分で決めることでも発信することでもないもんね。誰かが「すごく独創的だよね」とか「変わってる」と言うものであって、「俺、オリジナリティに溢れた人間になりたいんで!」って、絶対偽物が言うやつじゃないですか。最終的に、「もうあの人は、オリジナルであるとしか言いようがないよね」って、半分悪口で言われるくらいでいいんだと思いますよ、オリジナリティって。
model: lily franky
photography: naoya matsumoto
hair & makeup: aki kudo
interview: tomoko ogawa
edit & text: yuki namba
b. yourself
アニエスベーと5人の表現者たち